とある街のどこかの路地裏にひっそりと佇む一軒の店、夜魔猫亭。
いつ開くのか、何の店なのかも謎。
それでも気まぐれに明かりが灯る時、どこからともなくお客がやってくる。
ここは誰もが本当の自分の姿でいられる場所。

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。
 

放送はYouTube LIVEにて

友人の忠告

怖い話が好き!

私はあまり記憶力が良い方ではなく、
人の顔や名前はなかなか覚えられないし 、覚えてもすぐ忘れてしまいます。

ただ、自分が体験した事や感じたことは、
細かい事や流れ、誰が何をどうしたとかは結構よく覚えているので、
報告書や議事録を書くのは得意だったりします。
まあそれも、 特に重要な事でもない限り徐々に薄れては行きますが。

しかし、人生の岐路においての選択に関わるような事は、
時間が経っても忘れることはありません。
そう、普通は有り得ないですよね。
迷いに迷っていた時に背中を押した一言、それを誰が言ったかとか。

でも、長い間持っていた記憶が本当ではなかったって事が、あったのです。

20代の頃、結婚を前提に付き合っていた彼氏がいました。

同じフリーのデザイナーで私より10年上。

しっかり者で優しくてとても良い人だったのですが、
結婚話が出た後から、彼の私に対する接し方が変わってしまい、
私はそれに悩むようになりました。

兎に角、束縛が強い。
私のすることなす事、全部自分の思い通りでないと、なぜそうなのかと詰め寄られる。
毎日毎日、こんな良い彼を何かしらで怒らせてしまう私は
本当にダメな人間なんだと落ち込むばかり。
そんな時、
会社勤めをしていた時の同僚だった友人に呼び出されて、久々に飲みに出かけました。

彼女は私の家で友人たちを呼んでホームパーティをした時にも来てくれた娘で、
改まって話があるというので行ってみると、
「あの人とは結婚しない方がいい」って言うんです。

その理由は、ホームパーティの時に見た彼が、
彼女の知人の元旦那にあまりに似すぎていて本人じゃないかと思うからということで、
その人が当時の妻につらく当たっていたエピソードを話してくれたのですが、
それは私が彼にいつか言われた事とそっくり同じでした。

「あの彼はヤバい。逃げた方がいい。
本人かどうかわからないけれど、性格は同じだから」

そう真剣に言われ、私も冷静に考え直して結婚の話は白紙に戻し、
それからも色々と修羅場ったりもしましたが、なんとか別れることができたのでした。

後日、たまたま飲みに行っていた店で偶然にも、彼の元妻の親友の女性と同席し、
「あの男だけは絶対に許さない!」と言っていたところをみると、
相当なものだったようで、改めてホッとしたりもして。

まだ「モラルハラスメント」という言葉すらない頃の遠い遠い昔のことです。

で、ここからが本題。

つい先日、偶然にも町なかでばったり、その別れるようにと言ってくれた友人に出会いました。
二十年近くぶり?
それでちょっとお茶でもとなった時に、思い出して、
「そういえば、あの時、あなたの忠告のお陰で私は結婚に失敗しなくて済んだんだよね。
言いにくい事を言ってくれて、ありがとね」と言ったのです。

でも、彼女、
「え? 何それ? 私、そんな話してないよ」って言うんです。

元彼とそっくりな知人の夫なんて知らない。
そのエピソードも知らない。
「結婚しない方がいい」なんて言ってない、と。

ホームパーティに呼んだ私の女友達は彼女だけでした。
だからそれに因んだ話をできるのは彼女だけのはずですが、そんな記憶はないそうです。

それじゃあ、あの時、私に忠告してくれたのは誰だったんだろう?

事実じゃない記憶、他にもまだあるのかもしれないと思うと、ちょっと怖かったりします。

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