とある街のどこかの路地裏にひっそりと佇む一軒の店、夜魔猫亭。
いつ開くのか、何の店なのかも謎。
それでも気まぐれに明かりが灯る時、どこからともなくお客がやってくる。
ここは誰もが本当の自分の姿でいられる場所。

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。
 

放送はYouTube LIVEにて

川を見る老婆

怖い話が好き!

霊感のない普通の人でも、ふとした時に目の端に霊の姿が見える事があると言います。
これは、霊感0の私が見えてるような、気のせいのような、そんなお話し。

広島市内から離れて郊外の田舎の町に住んでいる私は、
更に田舎の山奥の工業団地内にある会社に勤務しています。

山を下りて麓の商店街まで車で約20分、
山を上って会社に行くのにやはり車で約20分、といった所。

冬は雪で難儀するけれど、その他の季節は自然が豊かで、
街に住んでいた頃だったら、わざわざドライブに来てもいいと思うだろう程の
景色の良い道をひた走ります。

片側に山、片側に小川の曲がりくねった道、
川の向こうには畑や田んぼ、ポツリポツリと古い農家が集落を作っており、
支流へと分岐する辺りの中洲の丘には桜並木があり、季節には一帯が薄桃色に染まります。
そんな長閑な場所なので、別荘を建ててる人もいたりして、
私は毎日、ちょっとしたリゾート気分で通勤を楽しんでいるのです。

でも、先日から私はある事が気になっています。

気付いたのは昨日今日の話ではなく、もう随分と前からでした。
「あれっ?」と思いはしてましたが、「気のせい気のせい」と流してきたのだけれど・・・

通勤途中の運転中、トンネルを抜けて少ししたところの川沿いのガードレール。
そこに「お婆さん」の幻が見えるのです。

白髪交じりの灰色の髪、薄こげ茶の割烹着みたいな作業着の老婆が
ガードレールの上から下を背を丸めて川を覗き込んでいます。

「えっ?」と思ってバックミラーで見ても誰もいません。
あれれ?見えたような気がしたのに変だな、と思いはしますがすぐに忘れて、
また次の日に同じ所で同じ物を見て、「えっ?」となる。

そんな事が何度も繰り返されました。
不思議な事に、帰り道では何も見ないのです。

ある時一度、いつものように「えっ?」となった後に、
車を止めてその場所に行ってみたことがあります。
何がそう見えてしまうのか確かめるために。

道の脇のガードレールの下あたりには、
所々、川土手から雑草が伸びている場所もあるので、
そうした雑草の塊が丁度小柄なお婆さんのように見えてしまうということは有り得そうです。
白髪頭とか割烹着とかはきっと、想像が補った産物でしょう。
人の脳ってそういうことをしても不思議じゃない。

しかし、その場所の下の方には確かに雑草が群れを作ってはいましたが、
ガードレールの高さにまで達してはおらず、
やはりどう見ても、背中を丸めた老婆と錯覚させる要素がないのです。

おかしい。
けど、
見えてしまう物は仕方ない。
そんな場合は、もう気にしないのが一番。

ということで、私は今も毎朝、ガードレールの上からかがみ込んで川を見ている
お婆さんの錯覚を見ながら通勤しているわけです。

最近では脳内補正が更に進んで、
向こうをのぞき込みながらちょっとこちらを気にしているお婆さんの表情や、
着ている農作業用割烹着の唐草花模様の柄まで認識するようになってしまいました。
長ぐつは泥の付いた青です。

毎朝毎朝、もう、「おはようございます」と声をかけてもいいぐらいのレベルです。

恐くはないのでいいんですけどね。

でも、あのお婆さんは、どうしてあそこで川を覗きこんでるんだろう?
何か落としたのかな?
下に気になる物があるのかな?
って、つい考えてしまいます。

あれは錯覚で、お婆さんなんか本当は存在していないのに、笑っちゃいますよね。

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