とある街のどこかの路地裏にひっそりと佇む一軒の店、夜魔猫亭。
いつ開くのか、何の店なのかも謎。
それでも気まぐれに明かりが灯る時、どこからともなくお客がやってくる。
ここは誰もが本当の自分の姿でいられる場所。

いらっしゃいませ。どうぞごゆるりと。
 

放送はYouTube LIVEにて

坂の街の夜

冥想・夢想記録

夜更かしが続いたので、睡眠不足解消のため早く床についた夜、
浅い眠りの中で、こんな夢を見ました。

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列車から降りて駅を出ると、そこは知らない街だった。

広場から見えるのは、
急な坂に雑然と統一感のない建物が好き勝手な方向を向いて建っている風景。
その間を複雑に道が入り組んでいる。

坂の中腹にある大き目の洋風の建物が今日の宿のホテルだという事は聞いていたので、
とりあえず荷物を置いてからだと、そこを目指すことにした。

クリーム色のモルタル壁にレリーフ、出窓に洒落た装飾があしらってあって、
周囲の風景からは妙に浮いているそのホテルはすぐ近くに見えるのに、
道が歪んで通じているので、なかなかたどり着くことができない。

そうこうするうちに、みるみる日は暮れて、
さっきまで中華街のように出店に人がワイワイと賑わっていたのが、
潮が引くようにサーッと消えると、まばらな街灯は、細い路地に濃い影を作るだけ。

家々が扉も雨戸も閉ざし静まり返る中、ホテルの建物だけが温かな光を漏らしていて
あそこだけまるで別世界のよう。

どこにどんな道があるかも見えない中で途方に暮れてると、
道の先の角にボゥっと明りが見えた。

揺らめき具合からみて、どうやら焚き火のようだ。

誰かいるのなら道を聞くこともできるだろうと近寄って行くと、
足元がぬかるんでいるのに気が付く。
雨も降ってないのに何でこんなにドロドロしているのだろう?

そして、角を曲がると目に飛び込んできたものは、

赤、赤、赤。

赤い、モミジの葉の乱舞のような鳥の足跡。

焚き火の前には血の沼が広がり、
なぜか鳥の足跡が大量に踏み荒らした跡を付けている。
その上に山積みになっているのは、惨殺されたと思しき人間の死体。
ほぼ形をとどめていないので、何人が積み重なっているのかはわからない。

呆然としていると、あちこちから悲鳴が聞こえ、
坂の上の方にも炎の灯りが見え始める。
多分、そこでも同じような事になっているのだろう。

見つかったら私たちも殺される。
私たち?
そう。私はこの街に取材のためにカメラマンを同行して来たのだった。

兎に角逃げなければ。
でも、どこに?
隠れる所を探さなくては。

何もわからない。何も見えない。ただ、闇雲に灯と人の声を避けて逃げ惑う。

と、同行者が、低い屋根に上がれる所を見つけた。
そして私にそこに隠れろと言う。
屋根と屋根の重なりの間に身を潜めれば下からも坂の上からも見つからない。

押し上げてもらったところで、ドヤドヤと近づいてくる人の気配。
マズい、彼は間に合わない。

「いたぞ!」と叫んで走ってくるのは、鳥の足をした異形の男たち。
息を潜める私の耳に聞こえてくるのは、ギャアギャアという奇声とカメラマンの叫び。
惨たらしい打撲音、何かが飛び散る音。
でも、私にはどうすることもできない。

ごめんなさい、ごめんなさい。見殺しにして、ごめんなさい。

やがて静かになり、物陰からそろそろと顔を出すと、鳥足の男たちは去って行く所だった。

血だまりに赤い足跡と松明を残して。

その時、一人の男が振り返り、私を見て目の色を変えた。

見つかった!終わった・・・

と、次の瞬間、街中に鳴り響く鐘の音。
夜明けの合図だ。
それは、あのホテルの上の時計塔から鳴っていた。

すると鳥足の男たちは、生気が抜けたように表情をなくし、
ゆらゆらと影の中に溶けて行くように消えてしまった。

血だまりの沼は、もう乾いている。

ここはそういう街なのだ。

「お腹すかない?」

声をかけると、倒れていたカメラマンが起き上った。
良かった、生きていた。
命さえあれば、壊れた身体はすぐ直る。

さあ、次の街に行こう。
今度はちゃんと写真を撮ってよね。

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